日曜日の予定




 休日外出
 ふと目について
 気付けば
 手元に一つの包み


 「……ん、…さん…海野さん!」

 「はいッ!」

 「あ、元気いっぱいでしたね。先生安心です。海野さんどこかに旅立っちゃったかと思いました。」

 「スミマセン…」


 静けさに包まれる化学室で、聞こえるのはコーヒーの温まるコポコポという音と校庭で活動中の運動部の声だけ。

 私と先生はビーカーに入れられたコーヒーを飲みながら、特に何を話すでもなく過ごしていた。

 私は鞄の中にあるモノをどうやって、どう理由を付けて渡そうかと思案していたのだけれど、そして何か良いアイデアが浮かんだような気がしたのだけれど。

 透き通る先生の瞳と視線を絡めた瞬間にどこかに消えてしまった。



 「先生、最近海野さんの考えてる事が分かるようになってきました」

 「へ?」

 「海野さんは先生に何か渡したい物がある、ピンポンですか?」


 何でもお見通しなのだと言わんばかりに悪戯っぽく微笑まれれば、私に残された選択肢は頷く事だけ。

 「………ピンポンです」


 そう答えて包みを取り出し、先生に差し出す。

 可愛らしく包装されたソレは先生の白衣には少しミスマッチだった。


 「開けても良い?」

 「はい」

 「…やや、コレは嬉しいですね」

 「先生の家の猫に使ってあげて下さい」


 先生へ渡した包みの中身はエサを入れる容器。

 いつか聞いた先生の家に住み着く野良猫の話が、耳から離れなかったのだろう。


 「海野さん、良かったら今度の日曜にでも先生の家に来ませんか?一緒にエサをあげましょう」

 「わ、是非!」


 これもある種のデートだと喜ぶ私が先生の家にお邪魔するのは

 また別のお話。